一日一楽

2024年春、セカンドライフが始まりました。

人目にさらされること

子供が生まれたとき、外に働きに出るのをやめて在宅の仕事をするようになった。

仕事は家でするようになったけど、子供たちが幼かった頃は幼稚園への送り迎えがあったり、子供が友達と遊ぶときに親も同伴だったりで、外との接点は多かった。

自分の立ち居振る舞いには気をつけていたし、たとえTシャツとジーンズ姿でも小ぎれいに見えるように気をつけていた。

 

子供たちが小学生になり親の送り迎えが必要なくなると、外に出る機会がものすごく減った。もともとインドア派だし一人で行動するのも好きだしで、誰とも接しないで過ごすことに何の不都合もなかった。数ヶ月に1回、保護者会に参加するために学校へ行く以外には出歩く機会もほとんどなかった。

人前に出なくなると、緊張感がなくなっていく。美容院へは半年に一度行けばいい方で髪伸び放題、メイクもしない、体重は増えていく。たまに少しかしこまった場に出かけないといけなくなっても、身なりを整えること自体が面倒で億劫になった。

 

20年ぶりにパートを始めたばかりのとき、売り場で作業していたらたまたま通りかかった事務の女性社員さんが寄ってきて、「ちょっと直させてね」と私のエプロンの紐をキュッと締め直した。「太って見えたらもったいないよ」とニコッとされた。

きっと私が無意識に結んだ紐が緩めで、エプロンがぶかぶかしていてだらしなく見えたんだろう。

 

去年、大学時代の友人たちとの女子会があり、15年ぶりに当時の同級生たちと会った。

ほとんどの人がフルタイム、フリーランス、パートの違いはあれど仕事をしている中で、専業主婦だという人が1人いた。大学卒業と同時に結婚して家に入り、そのままずっと専業主婦なので働いた経験がない。現在は子育ても終了して、趣味もなく家にこもっている生活だと言う。

 

その彼女、大学時代はとってもかわいい子で、50代になった今でももともとの顔の造作のよさはそのままなんだけど、髪の毛は白髪交じりであまり手入れしてないのかバサバサと広がっていて、服の着方もどこかだらしないのである。椅子に姿勢悪く腰掛けて、カトラリーをみんなに手渡すとき、ナイフの刃を相手に向けていてギョッとした。

自分もそうだったからよくわかるのだけど、普段から人の目を意識しない生活をしていて、緊張感のない状態に慣れてしまっているんだろうなと感じた。

 

たとえ家の中にこもっていても緊張感のある生き方ができる人はいいのだけど、私の場合は人前に出なくなったらあっという間に心身ともに気の抜けた状態になりそうなので、強制的にある程度人目にさらされる生活をするのがいいんだろうなぁと思う。